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From Professionals

E P O さん

 エポ 日本を代表するシンガーソングライター。80年代初頭の”土曜の夜はパラダイス”のブレイクから今日まで、音楽史に残る珠玉のヒット曲は数多い。海外公演でも高い評価を得る。完璧なまでに美しい声、素晴らしい歌唱力、優れた曲作り、音楽に対する真摯な取り組みは、世代を超えて多くの人の心をとらえて離さない。いろいろな場でのコンサートをはじめ、TV,ラジオでも大活躍中。
最新アルバム:air
タイトルのように、心地よい空間の中で、聴いていて不思議と懐かしさが身体にしみ込んでくるような美しいアルバム。全10曲中5曲がライブ録音。
EPOさんのサイト: eponica.net
 私の周辺にギターを弾く方が多かったこともあり、知らずとギターに触れる機会が増えていきました。楽屋で、ミュージシャンの方に楽器をお借りして、つま弾いているうちに、アコースティックギターの弦と木の振動が体温のように胸骨に伝わり、私の体も、一緒に音を奏でているような心地よさに共鳴したのか、ついつい鼻歌が生まれてくるのです。

そんな日々を重ねている内に、すっかりギターの魅力にとりつかれてしまった私は、そろそろマイ・ギターが欲しくなったので、あっちこっちの楽器屋をのぞいては、あの快感と共鳴を探し回りました。お店の人は、「プロだったらこれくらいの楽器を持たないと〜」と言い、不思議と、高価なギターを私に手渡します。しかし、値段が高いからと言って、良い音が出るとは限らないと知ったのは、その時でした。2万円くらいのボディーもペラペラなギターでも、甘くいい音を奏でるギターもあれば、さすが、値段だけある楽器だったら弾き手によっては、それなりの音も出ましよう。しかし、値段は関係ない。私にとっては、作り手に音に対するこだわりが無かったり、ギターのネックの幅や、楽器の大きさ、特に、弦高に至っては、自分の手の大きさに合わなかったりすると、ただただ苦痛であり、音を楽しむどころではなくなるのです。 結局、「鼻歌が生まれるようなギター」には、なかなか巡り合えないまま、数年がたちました。

 そんな折りに出会ったのが福岡さんのギターでした。数年前にトニーニョ・オルタが来日したツアーに、メンバーとして同行することになった私は、リハーサルで、彼が弾く甘くロマンティックなギターの音色にひと聞き惚れしてしまったのです。いったいどこのギターだろう?ブラジル製?それとも? 

 このギターが、福岡さんが作ったギターだと知ったのは、確かスタジオのロビーで晩御飯を食べていた時だったと思います。トニーニョ氏は指先で弾くらしい。ならば、指先でも弾きやすく、説得力のある音が出るギターをと、福岡さんは彼のギターを設計なさったそうです。その人の癖や習慣までも楽器がサポートしてくれることも、ギターには、大きく影響するものなのだなと思いました。

 履く人に合わせて靴の履き心地を整える、シュー・フィッターという職業がありますが、福岡さんはまさに、弾く人のイマジネーションや、体、手の大きさ、音の趣味にまで音色やタッチを調整してくださる、素晴らしいギター職人だと思います。と同時に、クリエーターとしての探究心は、芸術家が、線一本、色の滲みひとしずくにこだわるほどの繊細さです。

 ようやく、福岡さんのギターに出会えて、また一曲、また一曲と、私の中の、鼻歌が、今日も私の心の中で、メロディーを紡いでいます。

                                         EPO